2014年6月1日日曜日

関西コミティアへの旅路

今回の関西コミティアは、久々のコミックロケット新刊発射となる記念すべき日でした。

   

それゆえ、どうしても大阪に向わねばならないという気持ちで溢れていたわけですが
気持ちとは反比例するように、なかなか大阪には辿り着けず
一方帰宅時は、気持ちの高まりに同調するように、なかなか帰宅できなかったのでした

 なぜこんなにも困難な旅路になってしまったのか?
 旅路の主人公である自分は、その時全く気付いていませんでしたが
 大阪で待っていたロケット乗組員の二人にはその原因・発端は
 私という人間の根本に関わっている事に気付いていたようです

 奇しくも今回のコミックロケットVol.5のテーマは「ルーツ」

 悪戯に歳を重ねてきてしまった自分ですが
 21世紀の現在、わが国日本における平均寿命からみれば
 ちょうど折り返し地点に差し掛かろうというところ
 つまり、まだ人生半ばであるわけで
 今後の半生をより良いものにしたければ
 この困難な旅路のルーツに向きあわねばなりません

 その思いからか
 帰宅時の新幹線の中では
 予約したシートにも座らず
 出入口の窓から見える漆黒の風景から視線を外さず
 しかし、その焦点はガラスに映る己の深層へと絞り
 立ち尽くしたまま黙考し
 東京へ辿り着く頃
 根本原因(ルーツ)に触れた気がしました

 この経験を自らの中に収め
 自らの残る半生にのみ活かしていく事もできましたが
 ロケット乗組員の二人の勧めもあり
 この場を借りて、己の負のルーツを解き明かしていきたいと思います


 ----------------------------------

 激安チケット!と鼻息を荒くせずとも
 大阪まで片道3千数百円の航空チケットが手に入る時代になりました

 成田発というハンディはあるものの 1000円未満で飛行場まで辿り着けるならノープロブレム
 今回も迷う事無くLCC(格安航空会社)でチケットを購入した訳ですが
 既に数度利用していた事で、飛行機に乗る事への緊張感をすっかり欠いていました

 頭の中でも搭乗手続きの一連の流れは映像として流れていたにも関わらず
 出発数日前に航空会社から注意書きのメールが送られてきたのも関わらず
 チェックインという厳密なるルールのリミットが刻一刻と近づいているにも関わらず
 私は東京駅の土産物コーナーで試食を試みるなどして何を買うか悩んでいたのでした

 前日から何を買うべきか嫁と相談しており
 いくつかの候補が上がっていましたが
 肝心のお店が見つからず、
地下街をさ迷い歩く事に 多くの時間を浪費してしまい、
流石に焦っていたわけですが
 それでもチェックインという時間に厳密なルールについては
 未だ緊張感を欠いていました

 東京土産だけど「ずんだもち」という選択をした自分に 後ろ髪引かれる思いでしたが
 断髪式の関取の如く気持ちを断ち切りバス停に向いました

 バス停までは走りましたが
 停留所に辿り着き時計を見た時
 事態が風雲急を告げて暗雲に包まれている事に気付きました

 成田までどれくらい時間が掛かるのだろう?
 今更ながらそんな基本的な事にさえ気を配っていなかった愚かさが炙り出されました
 脇の下にひやりとしたものを感じながら
 まだ乗車すらしていないバスの時刻表をスマホで検索すると
 約1時間要する事がわかりました

 つまり、チェックインの最終時刻に空港に辿り着くということでした

 にも関わらず、まだチェックインの厳密さを微塵も感じていなかったのでした

 その時覚悟していたのは、
せいぜい、航空会社の方々に叱られる事と
 機内で待たされた乗客の白い目が関の山でした

 なので、スマホでチェックイン出来るという便利な機能があり
 以前利用した事があるにも関わらず
 空港までの1時間を居眠りして過ごしたのでした

 ダッシュすれば手続き間に合うかなぁ

 人生を半分も過ごしてきた者とは思えぬ
 学校に遅刻しそうな時のテンションで 空港に辿り着き
 記憶と勘に頼り切ってチェックインマシーンへと辿り着き
 大汗を流しながらボタンを操作しました

 画面には今まで見たことが無いメッセージが表示された気がしましたが
 取り出し口からは、プリントされた紙が吐き出されたので
 奪い取るようにして手荷物検査場へ駆け込みました

 検査場は空いており 係員に荷物を預けチケットを渡すと
 係員が不思議そうな顔でチケットを見て
 他の係員に確認をして わたしにチケットを返してきました

 その時初めてチケットと思っていた紙には
 「この機械ではお取り扱いできません」という文字だけが
 黒々と大々的に刻印されていた事を知りました

 すぐさま航空会社の窓口に走り戻り チケットを見せると
 「チェックインしていないので、この便には乗れない」 という事実を
淡々と手短に伝えられました

 ここで、ようやく厳密さを、最悪の事態に陥った事を
 余りにも愚かな己の姿を痛いほど知らされたのでした

 しかし、自らの愚かさは早々受け入れられるものではありませんでした

 どうにかリカバリー出来ないか掛け合うと
 追加料金を払えば次の便に乗れるとの事でした
 では、それで!と発するより早く航空会社の女性は言いました
 「次の便は、明日の6時30分になります」

 何が最良なのか?
 他に方法があるのか?
 行かないという選択は出来ないということしか わかりませんでした

 にもかかわらず、翌朝の便を選ぶという選択枠も 10分後には消滅すると宣告され
 迫り来る新たなリミットのカウントダウンが開始されたのでした

 眼も眩むほど広大に見える空港内で
 どうすればリカバリー出来る飛行機を確保できるのか?
 果たして関西空港行きの飛行機があるのか?

 目の前に息をして動く生身の人間である航空会社の人間がいるにも関わらず
 一つ一つ航空会社の窓口をあたっていくのは大事な選択枠の喪失に直結するように思われ
 頼れるのはネット空間となりました

 検索結果は、もう関西空港行きの便は無いという事実でした

 もはやリカバリーは出来ないという事実に
 直視したくなかった己の愚劣さに
 その時真正面から突きつけられたのでした

 財布から、わずかばかりの追加料金を払い
 翌朝の航空チケットを受け取ると
 直ぐそばのベンチに座り込みました

 翌朝のチェックインは絶対逃したくないという気持ちもあったからですが
 とても立ってはいられなかったのです
 ただ、愚かとはいえ、次にすべき事は、とにかく大阪で待つ二人に連絡せねばということでした

 すぐさま電話をしましたが、電話に出ませんでした
 仕方ないので、メールをしましたが 一向に返事は帰ってきませんでした

 飛行機の中では携帯やスマホは使えないはずですし
 今は日本の空を移動している最中のはずの人間から
 電話が掛かりメールが届くという事実が
 心霊現象か白昼夢のように受け入れ難かったに違いありません

 実際、翌日聞いたところ メールに書かれていた事が
 日本語であり、主語述語も、しっかり文章として理解できたのだが
 そこに書かれている事が、しばらくの間、頭の中に入ってこなかった ということでした

 僕が一言に置き換えるならば
 「現実の人間がこんなに愚かな事をするなんてありえない」
 ということだったのではないでしょうか

 愚かな人間は 愚かな行為を積み重ねていってしまうものなのか
 はたまた、強さと言い切ってしまっていいのか
 言い切ってしまう事こそが更なる愚かさの泥沼なのか
 頭の中はぐるぐると、そんな思いが巡っていましたが
 現実逃避と言われようがかまうもんか、
と自らに高らかに宣言したのでした
 「成田で暮らそう」

 そして、トム・ハンクス主演映画『ターミナル』を
 リアルに体験する事にしたのでした

 -------------------------------------------

 唐突ですが、以前ルパン3世の素晴らしさについて考えた事があるのですが
 超人的な知力・体力・機転の良さやユーモアもさることながら
 気持ちの切り替え方こそが超人的で最大の魅力なのだと思い至ったのでした

 普通の人生では1度だってありえないほどの危機的状況に陥っても
 『あきらめる』という文字は無く、わざわざ「希望を見出す!」と力を振り絞る事も無く
 極当たり前に突破方法だけを見つけ出し、状況を楽しんでさえしてしまう

 そういう超人さは、まさにあこがれであり
 出来れば実践したいものです

 成田で過ごしたからといって生命の危機にはなりませんが
 この悪夢的な状況を逆手に 成田に居続けられる今を楽しもうと
 ルパンよろしく気持ちを切り替えたところ
 急に空腹を感じ始めました

 早速、どんな店があるのか散策をはじめました
 あのまますんなり飛行機に乗っていれば
 大阪では間違いなく飲んで食ってしていたはずなので
 その分の予算を注ぎ込むことは問題あるまい

 そう思うと ケチケチ星人の自分に取っては
 自分だけの為に外食し飲酒するなんてことを
 これまで、ほとんどしてこなかったし、
 そこまで潤沢に資金を投入する事は皆無だったので
 妙な高揚感にさえ包まれました

 そう、どの店だっていいのだ
 どれを食ってもいいのだ
 そして、一人で飲むのだ


 ターミナルごっこをしている人間は
 他の人々とは違い、空港という施設に勝手な親近感を感じるようで
 どんなに奥まっていて、立ち入ってはいけないのでは?と感じるようなエリアでさえ
 『関係者以外立ち入り禁止』の看板を見かけぬ限り、ズンズンと踏み込んでしまうのでした

 飲食店や土産物店が無くなり
 一切の看板が見当たらない
 まさに関係者のみのプライベートエリアを感じるその一角に
スパイ気分で潜入すると
 暖簾が掛けてある入り口を発見しました

 中を覗くと、どこかで見たことがある作りの内装で
 動く物体を見て理解しました
 回転寿司屋でした

 ジャングルでラーメン屋に出会ったような驚きに包まれ
 迷う事無く店内に入ると
 食欲旺盛な女子高生の二人組以外は
 日本以外の東洋や西洋の人々がちらほらと食事していました

 

 ひかりものが好きな私は、アジやイワシを頼み
 隣で「うまいうまい」を連発し 順調に皿のタワーの摩天楼街を開発し続け
「ネギトロ巻きをネギ抜きで!」と注文する女子高生がべた褒めしていたサーモンを食すと
 気持ちもやや落ち着き、次なる作戦を思いついた

 『1箇所で腹を満たすのはモッタイナイ!いろいろ巡ろう!』 

--------------------------------------------------

 作戦は即座に決行され
 江戸っ子を気取り3皿で寿司屋を切り上げた

 次の店を物色しはじめたところで
 酒を傾けながら航空機を眺めるのは素敵じゃないかと思い至った

 すると、目の前にはコンビニがあり、 廉価なビールをやすやすと手に入れることが出来た

 

 薄闇の空港をつまみにビールを流し込む

   

しかし、塩気が足りないのでコンビニへ舞い戻り おつまみを購入する

 


 夜は深まってきた


   

ヨーロッパ系の老夫婦が、買い込んできた惣菜を上手に箸を使って食べていた

   

塩気の後は甘みが欲しくなるのか
 食欲のエンジンが唸りだしたのか
 次なる一品が欲しくなった
 しかし、またコンビニに行くのも芸が無い
 唐突にひらめいた
 マクドナルドで買おう!
 ジャンクなものを求めていた
 マクドナルドで一番好きなのは何? と問われたら、
マックシェイクと声にする寸前に思いとどまり
これを指差すだろう

   

熱々のアップルパイは、あっというまに胃の中に入ってしまった

 闇の中のジェット機は、白さに気品が漂い
 貴婦人と呼ばれるのが至極当然のように思われた

 

 冷気が体温を奪い始めたので 空港内に戻ると 人々の姿が消えていた

 

 そして、誰もいなくなった

   

ゴールデンウィークも過ぎ、
今の時期に空港内で一晩過ごすような人は誰もいないのかもしれない
 半分そう言い聞かせながら、TBSラジオを聴きながらベンチで横になった

 かたわらには、翌朝の朝食と共に購入したワインがあり
 したたかにアルコールが回り始めた

 ぼんやりする視界に警備員が入ってきた
 口が何事か発しているように動いていた
 イヤフォンを外して理解した

 「このエリアは泊まる事ができないので、隣のエリアに行ってくれ」

 隣のエリアに移るも、やはり人の姿は無かった
 疑念から酔いも冷め掛け、眠りに落ちる事が出来ぬまま
 広々としたベンチでむやみに手足を広げて横になっていると
 再び警備員に立ち退きを迫られる

 愚かなものに安住の地はないのか

 眼がそう訴えていたのかもしれない

 警備員は、親切に順路を教えてくれた

 宿泊可能エリアには、多くの人々が既に横になっていた
 しかし、すぐに自分の場所は確保できた

 一人で横になっていた時は、泥棒を恐れ
 財布を服の中に隠しこんで警戒していたが
 このエリアは、一晩中交代で警備員が立っており
 ほとんど恐れる事無く、電車で熟睡するように眠りに落ちた

 翌朝、チェックインに向う為、早めに起きると
 宿泊組は増えていて、若人達が泥のようにベンチで眠り
 お嬢さんたちも、こちらが恥ずかしくなるくらい大胆な姿で眠りに落ちていた

 顔を洗い朝食を食べた

   

順調に手続きを済ませ
 眩しい朝日と朝のキリッとしまった空気に
 あたらしい日が始まった喜びを感じた

   

大阪に到着するなり
 帰りの新幹線の予約を済ませた

 何かを取り戻そうと 朝食の追加としてうどんを食べ
 昼飯に野菜たっぷりのポタージュスープと
 凝ったつくりの中華丼を選び
 関西コミティアでのミッションに集中した

 関西コミティアがはねて
 トサカウシが手配してくれた沖縄料理の店で 打ち上げをした

 店に向う道すがら やはり、何かを取り戻すべく
 やなかのたこやきを食べた

 打ち上げには、木村いこさんも参加してくれて とても楽しく過ごせた

 楽し過ぎた

 帰る時間を忘れるほどに

 トイレに入り 酔った頭で帰りの時刻表を調べると
 なんだか怪しげな時間になっているようだった

 そろそろ、帰らないと新幹線に乗れなくなるかも
 という、緊張感の無いテンションでみんなに告げると
 まったりとおひらきになり
 みんなで駅に向った

 駅に到着し、時刻を見てトサカウシは言った
 「今からで、その新幹線に間に合うかなあ?」

 明らかに間に合わないという事実に
 乗り換えの駅に到着するまでには気付き
 しかし、気付いているのは自分だけで
 他の誰も気付かなかった
 気付きようもないし
気付かなければならないのは自分しかいなかったのだ

 電車がホームに到着するなり
 同じ新幹線に乗るたく氏を置いたまま
 全速力で階段を駆け上がり
 手短に駅員に説明して改札を通り抜けて
 みどりの窓口に駆け込んだ

 とても冷静に手続きを進める窓口の職員により
 最終の新幹線に乗れることが可能になり
 新たなチケットを渡された

 取って返してたく氏の所に戻ると
 置いていかれたと思ったのか カンカンに怒っていた

 運悪く、帰りの電車が我々と同じだったいこさんは
 そんな二人を笑顔で見ていてくれた

 新大阪でいこさんと別れを告げ
 新幹線に乗り込もうとするが
 土産を買っていない事に気付き
 土産物屋に走った

 再び置いていかれると思ったのか
 酔い疲れているはずのたく氏も一緒になって走って付いてきた

 しかし、土産物屋で、目的の店はとっくに閉店しており
 再びたく氏に戒められる

 ようやく新幹線に乗り、
 慌てて切り替えたチケットだったので
 席もバラバラに座り帰路についた

 だが、シートに深く埋まるたく氏とは違い
 己の愚かさが再度醜いまでに露になった事で
 一晩過ごした成田では気付けなかった
愚かさの根本原因(ルーツ)について考えずにはいられなかった

 安楽にシートに座っていることさえ罪に感じられ
 出入口の窓から漆黒の闇を見つめていた

 ------------------------------- 

この長くどこまで続くのか知れない駄文に
 これ以上誰もつき合わせる事は出来ません 

ルーツについての考察は 自らの中に収め
 改めてここに記しませんが
 もし、苦痛に耐えここまで読んでくださったのであれば
 ここまでに記した文章や行動や思考で
 その愚かさの原因にお気付きになることでしょう

 このような愚かな人間がのうのうと生きている事を思えば
 生きる希望も湧いてくるかもしれない
 反面教師として、誰かの人生がより良くなる事を祈りつつ
 ここで筆を置きます

 最後まで御読みくださりありがとうございました


1 件のコメント: